ビエンナーレに託されたビジョン

展覧会はどのように都市の活性化プロジェクトに用いられているのだろうか。少し前、今年のはじめの話で大変恐縮なのだが、バンコクアートビエンナーレの紹介をさせて頂きたい。私が育ったタイは今でこそ国民の大半を中産階級と呼ばれる人々が占めるものの、かつてはかなり貧富の差が激しく、アートや芸術と言うと上流階級のみに許された嗜みとしか認識されていなかった。しかし、最近では、バンコクを東南アジアのコンテンポラリアートの拠点にしようという動きがあり、政府、NPOと企業の三者の協同のもとタイ人の若手アーティストの育成、および国際ビエンナーレの参加のためのサポートなどが積極的に行われている。

作品はバンコク都内の20箇所の美術館、展示スペース、美術館、お寺など、様々な用途の空間で一斉に展示された。一番下の写真だが、草間彌生のカボチャのオブジェがCentral Worldというデパートの天井から吊られており、ごく普通の商業施設とは思えないような雰囲気を醸し出していた。

ここで面白いのは、このビエンナーレがタイ国内でのコンテンポラリアートの活性化のみならず、バンコクの都市としての活性化にも繋がっているように見受けられた点である。観光客だろうが、バンコク都民であろうが、ビエンナーレの作品群を見ようと思うと、公共交通機関を使わねばならないし、もし商業施設の作品を見たいとなるとおそらくその商業施設でついでに食事や買い物なども必然的にするだろう。SNS大国のタイならではなのか、全ての作品は写真を撮ることが可能であり、むしろ積極的にSNSでシェアしてくれ、という姿勢が取られていた。要はSNS上のシェアによりさらなる動員数(そしてそれによる消費)が見込めるのだ。

今後もバンコクのコンテンポラリアートの拠点としての発展に注目したい。

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グラフィックデザイン科の学生として日々考えている事など

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